四国のツキノワグマは本当に「絶滅寸前」か?――個体数・分布・保全の最前線をわかりやすく解説

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「四国のクマは絶滅に近い」と聞いて不安になった方へ。
結論を先に言うと、四国のツキノワグマ(地域個体群)は極めて個体数が少なく、遺伝的脆弱性や局所分布の狭さから高い絶滅リスクに直面している。
ただし、最近の調査では親子の確認などのポジティブな兆しもあり、保全の取り組み次第で将来を変えられる可能性もあります。以下、データと現場の声を交えて解説します。
1|現在の個体数と分布はどのくらい?
学術報告や保全団体のまとめでは、四国のツキノワグマの推定個体数は十数頭〜数十頭のレンジとされます。日本クマネットワークなどがまとめた報告では、2010年代に16〜24頭と推定されたことがあり、非常に少ない水準です。国内の他の地域と比べても明らかに個体数が少なく、分布は剣山山系を中心とした四国東部に限局しています。
(最新のセンサーカメラ調査でも、複数箇所で個体の撮影・識別が行われ、2024年度の「はしっこプロジェクト」では最低26頭を識別、親子も確認されたとの報告があり、個体確認が続いていることは注目点です)。
2|なぜ「絶滅リスク」が高いのか?
- 個体数の少なさ:個体数が少ないと外部衝撃(病気・交通事故・異常気象)で急減する恐れがあります。
- 遺伝的多様性の低下(近交弱勢):遺伝子の多様性が低下すると繁殖力や抵抗力が下がり、シミュレーションでは将来の絶滅確率が高まると報告されています。
- 生息地の断片化:林道や開発、古くからの駆除などで個体群が孤立化しやすい。結果として個体群間の交流が少なくなります。
これらが複合して「絶滅に近い」と言われる所以です。
3|最近の調査で見えた希望の光
一方で、近年の継続的なカメラトラップ調査やフィールドサイン調査で親子の確認や辺縁地域での新たな撮影例が得られており、完全な絶滅宣言を出す段階には至っていません。国・地方・研究機関が共同でモニタリングを続け、分布域の把握と保全計画を進めている点は重要です。
4|現場の声
「子どもの頃はクマを見たという話が普通にあったが、最近はめったに見ない。残っているのはせいぜい数頭では」— 里山に暮らす70代男性。
「保護はしたい。でも、農作物被害や人との共存も課題。引き続き情報共有と補償が必要」— 農家の女性。
「センサーカメラで親子が写っていた時は、希望を感じた。だけど数が少ないのは事実で、若い世代の関心が続くかが鍵」— 地域のNPOスタッフ。
これらの声からは、“保全したい”という意志と、“現実的な被害・共存問題”という両面の難しさが浮かび上がります。
5|保全のために今何が必要か?
- 長期的なモニタリングの継続:生息数・繁殖の把握は最優先。センサーカメラ・遺伝子解析の組合せが有効です。
- 生息地の回復と連結(コリドー形成):個体群間の交流を促す森林管理や道路計画の配慮。
- 地域と連携した被害対策:農作物対策や注意喚起、補償制度の整備で人の生活とクマの保全を両立させる。
- 遺伝的多様性の確保を視野に入れた方策検討:最悪のケースを避けるため、学術的検討と社会的合意のもとで遺伝子管理や補完移入の可能性を議論する必要がある(賛否両論あり得る難題です)。
6|私たちにできること
- 地域の出没情報に注意し、怖い話だけで終わらせず保全活動に関心を持つ。
- 不要な餌(生ごみ・放置果実)を管理し、クマとの衝突リスクを減らす。
- 地域のNPOや研究機関のモニタリング活動に参加・協力する(センサーカメラ設置支援など)。
おわりに
四国のツキノワグマは「絶滅寸前」と言われるほど脆弱な状態にあることは事実です。
しかし、継続的な調査で繁殖の証拠が得られていることは希望の材料でもあります。保全は一夜で成るものではなく、地域の理解と長期的な協働が必要です。あなたの住む地域で何ができるか、小さな一歩から考えてみませんか。


