警察の拳銃ではクマを倒せない？猟友会のライフルとの殺傷力の違いを解説

近年、日本各地でクマの出没・襲撃事件が相次いでいます。秋田県や北海道では人命被害も発生し、警察や猟友会、自衛隊が出動するケースも増えています。
ニュースで「警察官がクマに発砲したが、逃げられた」「駆除は猟友会が行う」といった報道を見るたびに、「警察の拳銃ではダメなの？」と疑問を抱く人も多いでしょう。

この記事では、拳銃とライフルの殺傷能力の違い、なぜ拳銃ではクマに有効でないのか、そして現場の声や専門家の意見をわかりやすくまとめます。

1. 警察官が使う拳銃「38口径リボルバー」の威力とは？

日本の警察官が携帯している拳銃は、ほとんどが「ニューナンブM60」という.38口径リボルバーです。
この拳銃の基本的なスペックは以下の通り。

項目	数値（概略）
口径	9mm（.38インチ）
弾速	約250〜300m/秒
弾丸の重量	約10g
有効射程	約25〜50m
発射エネルギー	約250〜400ジュール

人間相手には十分な停止力がありますが、クマに対してはほとんど致命傷になりません。

たとえば、成獣のヒグマは体重200〜300kg、筋肉と脂肪に覆われ、頭蓋骨の厚さは最大4cm。拳銃弾では貫通せず、表面で弾かれてしまうことがあります。

実際、北海道警察関係者によると「至近距離で撃っても、毛皮と脂肪で弾が止まることがある」との報告もあります。

2. 一方、猟友会が使う「ライフル銃」は圧倒的な破壊力

一方、猟友会や熟練ハンターが使用するのはライフル銃（ボルトアクション式など）で、弾のエネルギーは拳銃の10倍以上あります。

項目	例：.30-06 Springfield弾
弾速	約850〜900m/秒
弾丸の重量	約11〜14g
有効射程	300m以上
発射エネルギー	約3,500〜4,000ジュール

この威力なら、厚い皮膚や頭蓋を貫通して心臓・脳を破壊でき、1発で致命傷を与えることが可能です。
つまり、拳銃とライフルでは1桁以上の殺傷能力差があります。

専門家によれば、「拳銃弾では大型獣を止めるのは不可能。ライフル弾でなければ即死させるのは難しい」とのこと。

3. なぜ警察はライフルを使わないのか？

「じゃあ、警察官もライフルを持てばいいじゃないか」と思う人もいるでしょう。
しかし、法制度と装備の面でそれは難しいのです。

● 理由①：警察の拳銃は「人間相手」用

警察の装備は「対人警備」が目的であり、動物の駆除を前提としていません。
拳銃は携帯性・安全性を重視し、至近距離での使用に設計されています。

● 理由②：ライフルは狙撃専門部隊のみ所持

警察にライフルがないわけではありませんが、使用できるのは「狙撃班（SATやSIT）」など特殊部隊のみ。
地方交番の警察官が日常的に持つことはありません。

● 理由③：動物対応は「猟友会」との協力体制

動物の駆除や捕獲は、原則として自治体と猟友会の管轄。
警察は「人命救助」と「安全確保」のために発砲許可を出すことがありますが、クマ駆除の主体ではありません。

4. 実際の現場では「拳銃が効かない」事例が多数

2023〜2024年に報道されたクマ出没事件では、次のようなケースが見られます。

• 秋田県北秋田市（2023年）
  警察官がクマに拳銃で発砲するも、逃走。のちに猟友会がライフルで駆除。
• 北海道札幌市（2021年）
  市街地に出没したヒグマに警察が10発発砲。うち数発命中したが、止まらずに逃走。
  → 結局、狩猟免許を持つハンターが出動して仕留めた。

これらの事例からも、拳銃では止められない現実が明らかです。

5. みんなの声（SNS・現場・地域の意見）

🗣️「拳銃じゃクマの頭蓋に届かない。毛皮が分厚いんだよ。」（元自衛官）
🗣️「警察が悪いんじゃない。制度が“対人”しか想定してないのが問題。」（猟友会関係者）
🗣️「人が襲われてるときに“ハンターを呼んでから”じゃ遅い。」（秋田県住民）
🗣️「警察にもライフル班が常駐する時代にすべきでは？」（SNSより）

現場のハンターからも、「拳銃で撃っても筋肉と脂肪で止まる」「至近距離で心臓を狙っても貫通しない」といった声が多く、制度のギャップが問題視されています。

6. 海外ではどうしているのか？

たとえば、アラスカやカナダなどクマが多い地域では、警察やレンジャーもショットガン・ライフルを常備しています。
また、森林警備隊は「熊スプレー」や「ラバーバレット（ゴム弾）」などの非致死武器も併用しています。

日本では「市街地に銃を持ち込むこと」への抵抗感が強く、今後の議論が求められています。

7. 現実的なクマ対策とは？

警察官が拳銃しか持っていない現状では、根本的なクマ対策は“接触しないこと”が最優先です。

✅ 日常でできるクマ対策

• 山に入るときは 熊鈴・ラジオ を鳴らす
• 家庭菜園・果樹（柿・栗など）は 早めに収穫
• 生ごみや餌を 屋外に放置しない
• クマが出たときは 110番ではなく役場・猟友会経由で通報

また、個人レベルでは 熊撃退スプレー（カプサイシン系） の携行も推奨されています。

まとめ：拳銃とライフルの差は「道具の目的」が違う

項目	拳銃（警察）	ライフル（猟友会）
主目的	対人制圧	狩猟・駆除
有効距離	25m以内	300m以上
威力	約300ジュール	約4000ジュール
クマへの効果	ほぼ無効	致命傷を与える可
所持者	警察官全般	狩猟免許保持者のみ

つまり、「警察の拳銃が無力なのではなく、“想定外の相手”に出会っている」のです。
制度・装備・訓練がすべて人間向けであり、クマのような野生動物への対応は別システムが必要なのです。

🟩 結論

クマ対策には、

• 拳銃ではなくライフルによる即応チームの設置
• 猟友会と警察の連携強化
• 市民レベルでの遭遇回避
  この3つが鍵になります。

自然と共存するためには、銃の威力だけでなく、社会の「準備力」こそ問われているのかもしれません。