熊野古道と“クマ”――クマ被害で観光客は減ったのか?現状を徹底解説

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近年、全国的にクマの出没や人身被害が相次いでおり、山歩きや里山観光を楽しむ人たちの不安材料になっています。
熊野古道も例外ではありません。では、実際に「クマのせいで観光客が減っている」のか——数字と現場の声で検証します。
結論
- 熊野古道全体の来訪者数は、コロナ禍の落ち込みから回復している(コロナ前と比べて地域差はあるが、近年は回復傾向)。
- ただし局所的にはクマ出没が観光行動に影を落としている(一部区間で入山自粛・注意喚起・貸し出し備品の実施など)。
- つまり「全体の下押し」には至っていないが、「行く場所・時期・準備」を変える観光客は増えている――これが実情です。
以下、数字・事例・観光客や事業者の声を交えて詳しく解説します。
1|データで見る
熊野古道伊勢路の来訪者推計値を見ると、コロナ禍の2020年に大きく減少した後、2021〜2023年は回復基調にあります。令和5年(2023年)は 約304,695人 と前年から約4.7%増と報告されています。観光全体でのインバウンド回復も追い風になっており、和歌山県全体の観光入込客数も増加傾向が続いています。
ポイント:訪問者数の「総量」は回復しているが、訪れるエリアやシーズンの“選択”が変わっている可能性があります(後述)。
2|実際のクマ出没・被害事例
熊野古道周辺では、近年目撃情報や被害(装備貸し出しや注意喚起につながる事例)が発生しています。たとえば、ツヅラト峠周辺では人身被害が発生し、観光協会が鈴やクマ撃退スプレー、ラジオの貸し出しを行うなど即応的な対策がとられています。自治体や熊野古道関連施設も、目撃情報が入るとサイトや掲示で入山注意を呼びかけています。
つまり、安全確保のための情報発信と備品貸し出しが常態化しており、これは「観光を止める」より「安全に行くための仕組み作り」を優先していることを示します。
3|現地の“みんなの声”
現地の観光客やガイド、宿泊業者の声から傾向を拾いました(代表的な声を要約)。
- 「1〜2年ほど前までは気軽にハイキングに行く人が多かったが、最近は朝夕の薄明時間を避ける・単独行動を避けるという人が増えた」 — 地元ガイド。
- 「看板で“クマに注意”とある区間は、初心者向けツアーのコースから外すことがある。安全確保が最優先」 — ツアー会社。
- 「貸し出しの鈴や熊スプレーの準備があると安心して歩ける。自治体の貸出制度はありがたい」 — 若いハイカー。
- 「SNSで‘熊野古道に熊が出た’という書き込みが回ると、週末の個人客が少し減ることがある」 — 民宿経営者。
これらの声は、“行く人は行くが、行き方が変わった”ことを示しています。観光全体が落ち込むほどのパニックには至っていないが、リスク認識の高まりが顕著です。
4|観光業側の実務対応――貸出・迂回コース・情報発信
地域の観光協会や自治体は次のような対応で観光と安全の両立を図っています。
- 鈴・ラジオ・熊撃退スプレーの貸出(尾鷲市・尾鷲観光物産協会など)。
- 目撃情報の即時発信(熊野古道センターや市町村の公式サイト)。
- ツアーのコース変更・時間帯の見直し(日没前に下山する設定など)。旅行会社やガイドが安全ルートを優先。
これらは「観光をやめさせる」対応ではなく、「安心して来てもらうための現実的措置」です。観光事業者の柔軟性が回復の牽引になっています。
5|クマの影響が強く出るケース
観光客が特に注意すべき場面は次の通りです。
- 薄明薄暮の時間帯(早朝・夕方):クマが活動しやすい時間帯。遭遇リスクが上がる。
- 果樹や山菜の多い季節(春〜秋):クマの採餌行動と重なる。
- 人里に近い区間や里山寄りのコース:里地里山の放置地がクマの餌場になりやすい。
- 単独行動・無音行動:鈴や声かけ無しは危険。自治体は「音を出す」「複数で歩く」を推奨している。
6|「安全に熊野古道を楽しむ」チェックリスト
- 出発前に自治体サイト・熊野古道センターの最新の目撃情報をチェックする。
- 鈴・ラジオ・熊スプレーを携行(自治体の貸出制度を利用すると手軽)。
- 単独行動を避ける/早朝夕方は避ける。夜間の歩行は厳禁。
- 地元のガイドやツアーを活用する(安全ルート・緊急時の連絡体制がある)。
- 見かけた痕跡(足跡・糞)や子グマの存在には特に注意。子連れグマは危険度が高い。
7|観光客減少は「地点差」が鍵
まとめると、熊野古道の総来訪者数は回復しており(地域全体の伸びも確認される)短期的な観光客減には結びついていません。一方で被害が起きた区間や目撃が多い区間では訪問者が一時的に落ち込む、あるいはツアー運営側がその区間を外すといった「地点差」や「コース選択の変化」が生じています。したがって、観光全体は持ち直しているものの、観光の“質”や“行き方”が変わっているという理解が最も正確です。
8|地域と旅行者に向けた提言
- 自治体側:目撃情報の迅速な発信、貸出し備品の維持、ガイド育成や迂回ルートの整備を続けること。
- 旅行会社・ガイド:客に対して事前説明を徹底し、安全を最優先するツアー設計を。
- 旅行者:情報収集・備品携行・ガイド利用など「自分でできる安全対策」を必ず行う。
これらの取り組みが進めば、熊野古道は「安全に自然を楽しめる聖地」としての魅力を維持したまま観光を続けられます。
最後に
熊野古道は世界遺産の歴史と深い自然が魅力の場所です。
クマ出没というリスクは確かに増えていますが、“行かない”よりも“正しく準備して行く”ことが大切です。自治体の情報をチェックし、ガイドや地元の知見を活用すれば、感動的な体験を安全に得られます。現地の皆さんも観光客を歓迎しつつ安全対策に力を入れているので、互いに協力して熊野の自然と観光を守っていきましょう。


